Out Of Our Heads (US)

Out Of Our Heads (US)
  1. Mercy, Mercy
  2. Hitch Hike
  3. The Last Time
  4. That’s How Strong My Love Is
  5. Good Times
  6. I’m Alright (Live)
  7. (I Can’t Get No) Satisfaction
  8. Cry To Me
  9. The Under Assistant West Coast Promotion Man
  10. Play With Fire
  11. The Spider And The Fly
  12. One More Try

Released: 30 July 1965
Producer: Andrew Loog Oldham

Additional Musicians:
Jack Nitzsche – Percussion, Piano, Organ
Ian Stewart – Organ, Piano, Marimba

1965年7月にリリースされ、ストーンズにとって初の全米アルバム・チャート1位、そして初のミリオンセラーを記録した記念碑的な大名盤『Out Of Our Heads』のアメリカ盤です。

本作最大のトピックは、ロックの歴史を完全に変えてしまった世界的メガヒット曲「(I Can’t Get No) Satisfaction」が収録されていること。

2ヶ月後にリリースされた英国盤とは収録曲が半数近く異なり、アメリカ盤は当時の大ヒットシングルを惜しみなく投入した「最強のヒット仕様」となっています。ジャガー/リチャーズによるオリジナル曲と、彼らが愛したディープなR&B/ソウルのカバーが奇跡的なバランスで融合した全12曲を解説します。

世界を揺るがしたロックの金字塔!

  • Mercy, Mercy – ドン・コヴェイのソウルナンバーをカバー。キースとブライアンによる息の合ったツインギターの掛け合いが心地よく、アルバムの幕開けをグルーヴィに飾るトラック。
  • Hitch Hike – モータウンのスター、マーヴィン・ゲイのカバー。特徴的な3連小節のリフは、のちにヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「There She Goes Again」に引用されたことでも有名。
  • The Last Time – ジャガー/リチャーズ作のオリジナルとして発表され、全英1位・全米9位を記録。ブライアンが終始繰り返すあの印象的なメインギターリフが、ストーンズの代表的なサウンドを決定づけた最重要曲です。
  • That’s How Strong My Love Is – O.V.ライトが最初に録音し、オーティス・レディング版が知られる名バラードをカバー。ミックが憧れのソウルシンガーになりきって熱唱する、初期ストーンズの熱いソウル愛が伝わる名演。
  • Good Times – サム・クックのカバー。偉大なソウルシンガーへのリスペクトを込め、アコースティックギターをフィーチャーした軽快でポップな仕上がり。
  • I’m Alright (Live) – ボ・ディドリーのカバーで、1965年3月の英国ツアーでの貴重なライブ音源。当時のファンの凄まじい絶叫と、バンドの荒々しく爆発的なエネルギーがそのままパックされた熱狂のトラック。
  • (I Can’t Get No) Satisfaction – ロック史に永遠に輝くストーンズの代名詞。バンド初の全米No.1シングルとなり、世界中を興奮の渦に巻き込んだミリオンセラー・ヒット(※詳しくは後述にて)。
  • Cry To Me – ソウルシンガー、ソロモン・バークのカバー。泥臭いR&Bのグルーヴに乗せて、ミックがディープかつ情感豊かに歌い上げる隠れた名カバー。
  • The Under Assistant West Coast Promotion Man – クレジットはバンドの共作名義「ナンカー・フェルジ」。所属レコード会社(ロンドン・レコード)の敏腕プロモーターを皮肉った、ユーモアと攻撃性に満ちたブルースロック。
  • Play With Fire – シングル「The Last Time」のB面だった、ジャガー/リチャーズ作のオリジナル。ジャック・ニッチェによるハープシコードとタンバリン、アコギのみをバックにミックが冷徹に歌う、ストーンズの影のあるフォークポップの傑作。
  • The Spider And The Fly – ジャガー/リチャーズ作。ジミー・リード風のレイドバックしたシャッフル・ブルースで、日常の危うい男女の駆け引きを歌った初期オリジナルブルースの秀作。
  • One More Try – ジャガー/リチャーズ作のオリジナルで、アルバムのラストを軽快に締めくくるナンバー。ブルージーなハーモニカとソリッドなビートが、初期ガレージロックの勢いをそのまま感じさせます。
💡「初のオリジナル1位」に隠されたゴスペル原曲の存在

ミックとキースが「自分たちのサウンドを定義できた最初のオリジナル曲」と自負する本作ですが、実は完全なゼロから作られたわけではありません。彼らが参考にしたのは、高名な黒人ゴスペルグループ、ステイプル・シンガーズが1955年にリリースした「This May Be The Last Time」です。

原曲は「これが最後の集まり(集会)になるかもしれない」というスピリチュアルで敬虔なゴスペルソング(トラディショナル・ソング)でした。ストーンズはそこからコーラス部分のメロディと歌詞のフレームワークを拝借し、「俺が愛想を尽かすのもこれが最後だぜ」という女性への最後通告を歌ったロックナンバーへと、180度異なるロックンロールに仕立て直しました。


後年、キースも「ステイプル・シンガーズが歌っていた伝統的なゴスペルソングを再アレンジしたものだ」と直に認めています。ブライアンの弾く不穏なギターリフはストーンズの完全なオリジナルですが、楽曲の骨組みには彼らのルーツである黒人音楽への深い傾倒が隠されています。
💡 歴史を変えた「Satisfaction」ファズリフ誕生の舞台裏

7曲目に収録されている「Satisfaction」は、ストーンズを世界一のバンドへと押し上げたロックの金字塔です。しかし、あの有名な「ギザギザした歪んだギターリフ」は、実は偶然と勘違いから生まれました。

夢の中でリフを思いついたキース
1965年5月、ツアー中のキース・リチャーズは、フロリダのホテルで寝ている最中に突如あのメロディを思いつき、枕元にあったカセットテープレコーダー(Philips製の携帯テープレコーダー)に録音しました。翌朝テープを再生すると、「ジャッ・ジャッ・ジャー、ジャジャジャ」というリフが2分間録音された後、キースのいびきが40分間続いていたという有名な逸話が残っています。

「これはブラス(ホーン)の代わりだ」
その後、ハリウッドのRCAスタジオで本格的な録音が行われましたが、キースはあのリフを「本来はトランペットなどの管楽器(ホーン・セクション)が鳴るべき場所」と考えていました。そこで、管楽器の音をシミュレートするために、当時発売されたばかりのコンパクトエフェクター「ギブソン・マエストロ・ファズトーン(Fuzz-Tone)」を使ってギターの音を激しく歪ませて録音したのです。

キース自身はあくまで「仮のデモテープ」のつもりでしたが、マネージャーのアンドリュー・オールダムと他のメンバーが「これが最高だ!」とキースの反対を押し切ってシングルとしてリリース。結果として、そのファズギターの強烈なサウンドが世界中の若者を熱狂させ、エフェクターの歴史をも変える大ヒットとなりました。