
- She Said “Yeah”
- Mercy, Mercy
- Hitch Hike
- That’s How Strong My Love Is
- Good Times
- Gotta Get Away
- Talkin’ ‘Bout You
- Cry To Me
- Oh Baby (We Got A Good Thing Goin’)
- Heart Of Stone
- The Under Assistant West Coast Promotion Man
- I’m Free
Released: 24 September 1965
Producer: Andrew Loog Oldham
Additional Musicians:
Jack Nitzsche – Organ
Ian Stewart – Organ, Piano, Marimba
1965年9月にリリースされた、イギリス本国における3枚目のオリジナル・アルバム『Out Of Our Heads (UK)』。先にミリオンセラーとなった「Satisfaction」を大々的にフィーチャーした米国盤とは異なり、当時の英国では、最新の大ヒットシングルをアルバムに収録しないという独自のポリシーが色濃く反映されています。
米国盤とは収録曲が半数入れ替わっており、アメリカのスタジオ録音で進化した極上のR&Bカバーに加え、ジャガー/リチャーズのソングライティング能力がいよいよ開花したオリジナル曲がアルバムの要所に配置された、UK盤ならではの硬派な全12曲を徹底解説します。
英国独自の美学が貫かれた!全収録曲解説
- She Said “Yeah” – ラリー・ウィリアムズの1959年のR&Bをカバー。わずか1分30秒強の中に、激しい2ビートと歪んだギターが炸裂する、パンクロックを先取りしたような超強力なオープニングトラック。
- Mercy, Mercy – ドン・コヴェイのソウルをカバー。キースとブライアンの息の合ったツインギターの掛け合いが心地よい、アメリカ録音の恩恵が光る名演。
- Hitch Hike – マーヴィン・ゲイのモータウン・ヒットをカバー。後のロックシーン(ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなど)にも多大な影響を与えた、反復する3連ギターリフが印象的な1曲。
- That’s How Strong My Love Is – O.V.ライトが最初に録音し、オーティス・レディングでも知られる名バラードのカバー。ミックが憧れのシンガーになりきってエモーショナルに歌い上げる、初期ストーンズの熱いソウル愛の結晶。
- Good Times – ソウルの神様サム・クックのナンバーをカバー。アコースティックギターを前面に出した軽快な仕上がりで、彼らのポップセンスが光ります。
- Gotta Get Away – ジャガー/リチャーズ作の貴重なオリジナル曲。アコースティックギターのバッキングに乗せて、ミックが去っていく恋人への未練をどこか切なく歌うフォークロック風の隠れた秀作。
- Talkin’ ‘Bout You – ロックンロールの祖チャック・ベリーの「I’m Talking About You」をカバー。キースの鋭いリフと、イアン・スチュワートの跳ねるピアノが完璧にスウィングしています。
- Cry To Me – ソロモン・バークのディープ・ソウルをカバー。ズッシリとした重いリズム隊に乗せ、ミックが初期最高峰とも言える色気とソウルフルなボーカルを聴かせるトラック。
- Oh Baby (We Got A Good Thing Goin’) – バーバラ・リンのR&Bをカバー。ポップなビートと、メンバーの爽快なコーラスワークが心地よく転がるナンバー。
- Heart Of Stone – ジャガー/リチャーズ作の初期オリジナルバラード。全米ヒットを記録した初期の代表曲が、英国盤ではここで満を持してアルバムに組み込まれました。
- The Under Assistant West Coast Promotion Man – クレジットはバンドの共作名義「ナンカー・フェルジ」。レコード会社のプロモーターをユーモア交じりに皮肉った、泥臭いシカゴ・ブルースロック。
- I’m Free – ジャガー/リチャーズ作のオリジナル。アルバムのラストを飾る、「俺はいつだって自由さ」と歌う軽快なビートのフォークポップで、当時の時代の空気を感じさせる爽やかな名曲。
| 💡 なぜ英国盤には「Satisfaction」が入っていないのか? アメリカ盤(US)の『Out Of Our Heads』の絶対的な主役であり、バンド初の全米1位へと押し上げた歴史的メガヒット曲「(I Can’t Get No) Satisfaction」。しかし、このイギリス本国盤(UK)にはその影すらありません。これには当時の所属レコード会社「デッカ(Decca)」の厳格な編集方針と、英国のロック文化が大きく関係しています。 シングルとLPを完全に分ける英国文化 当時のイギリス音楽界には、「シングルとしてすでに発売され、ファンがお金を払って買ってくれた曲を、後からのアルバム(LP)にも収録して二重にお金を取るのはファンに対して不誠実である」という、独自の美学と強いポリシーが存在していました。そのため、「Satisfaction」はイギリスでは独立したシングル盤としてのみ流通し、国内のオリジナル・アルバムには収録されなかったのです。 ビートルズとの共通の美学 この方針は、同時代のライバルであるザ・ビートルズも全く同じでした。彼らも「She Loves You」や「I Want To Hold Your Hand」といった大ヒットシングルを英国のオリジナル・アルバムには一切収録していません。一方で、アメリカのレコード会社(ストーンズはロンドン・レコード、ビートルズはキャピトル)は「ヒットシングルが入っていないアルバムなんて売れるわけがない」という真逆のビジネス思想だったため、容赦なく曲を差し替えて「シングル入りアルバム」へと改変して販売していました。大ヒット曲が抜けているからこそ、この英国盤は「シングルに頼らず、アルバム全体のトーンやトータル性で聴かせる」という硬派なロック・アルバムの先駆けとなったのです。 |
| 💡 「I’m Free」が象徴する1965年のストーンズと『Aftermath』への架け橋 アルバムの最後を締めくくるジャガー/リチャーズ作のオリジナル曲「I’m Free」。この軽快なフォーク・ロック・ナンバーは、単なる1曲のポップソングという枠を超え、1965年当時のローリング・ストーンズの「覚醒」を象徴する極めて重要なトラックです。 初期R&Bバンドからオリジナル・バンドへの転換期 これまでのストーンズは、アメリカの黒人ブルースやR&Bを激しく肉体化して世に知らしめる「最強のカバー・バンド」でした。しかし、ミック・ジャガーとキース・リチャーズのソングライティング能力が急成長したことで、自分たちの言葉とメロディで同時代の若者たちの空気を代弁し始めます。「俺はいつだって自由さ、やりたいことをやるだけさ」と歌うこの曲は、過酷なツアーの連続から解放されたいというメンバーの私的な本音であると同時に、当時のロンドンを彩っていた若者文化(スウィンギング・ロンドン)の自由な空気とも重なって聴こえます。 1966年の金字塔『Aftermath』への絶対的な橋渡し この『Out Of Our Heads (UK)』は、ストーンズがカバーを主体とした最後の英国盤アルバムとなりました。「I’m Free」や「Gotta Get Away」で見せたオリジナル曲の手応えが確信へと変わり、バンドは翌1966年、ついに全曲完全オリジナル楽曲のみで構成された歴史的超大作『Aftermath』を誕生させることになります。 初期の泥臭いR&Bバンドとしてのストーンズが、世界を支配する唯一無二のオリジナル・ロックバンドへと変貌を遂げる。そのドラマチックな「過渡期の瞬間」が最もピュアに刻まれているからこそ、この英国盤ラストの「I’m Free」はファンの心に深く刺さり続けているのです。 |