Hackney Diamonds

Hackney Diamonds Live Edition
  1. Angry
  2. Get Close
  3. Depending On You
  4. Bite My Head Off
  5. Whole Wide World
  6. Dreamy Skies
  7. Mess It Up
  8. Live By The Sword
  9. Driving Me Too Hard
  10. Tell Me Straight
  11. Sweet Sounds Of Heaven
  12. Rolling Stone Blues
  13. Living In A Ghost Town (Japanese Bonus Track)

Released: 20 October 2023
Producer: Andrew Watt, Don Was

Additional Musicians:
Ron Blake – Trumpet
David Campbell – String Arrangement
Matt Clifford – keyboards
Karlos Edwards – Percussion
Elton John – Piano
Steve Jordan – Drums
James King – Sax
Lady Gaga – Vocals
Paul McCartney – Bass Guitar
Benmont Tench – Hammond Organ
Andrew Watt – Bass Guitar, Guitar, Percussion, keyboards, Backing Vocals, String Arrangements
Stevie Wonder – Piano, Rhodes Electric Piano, Moog Synthesiser
Bill Wyman – Bass Guitar

2005年の『A Bigger Bang』以来、18年ぶりとなるオリジナル楽曲のみで構成されたスタジオ・アルバム『Hackney Diamonds』。盟友チャーリーが亡くなってから初めてのアルバムであり、それまでのレコーディングが様々な理由で行き詰まってしまっていた中から生まれた、2020年代の奇跡的な金字塔です。

この状況を打開するため、2022年8月にツアーが終了した後、ミックはキースにニューアルバムの完成目標を「2023年2月14日(バレンタインデー)」に設定したことを伝えました。あえて明確な締め切りを設定することで、バンドに再び火をつけたのです。

新鋭プロデューサー、アンドリュー・ワット(共同作曲でも参加)の起用が功を奏し、90年代以降の最高傑作との評価も多い本作。ポール・マッカートニーやエルトン・ジョン、レディー・ガガといった超豪華ゲストを迎えつつも、ストーンズらしい強固なバンド・サウンドが全12曲に刻まれています。

2020年代に轟くストーンズ・サウンド!

  • Angry – 本作から世界に向けて最初にシングル・カットされた、キレのある強烈なギターリフとキャッチーなサビが炸裂するナンバー。80代を迎えたとは思えないミックのハリのある若々しいボーカルと、現代的な歪みをまとったキースのギターが、健在ぶりを世に知らしめるオープニングトラック。
  • Get Close – エルトン・ジョンがピアノで、さらにジェームズ・キングがサックスソロで参加したミドルテンポのファンキー・ロック。キースのこれぞストーンズと言える絶妙なリフの刻みと、絡み合う厚みのあるアンサンブルが極めて心地よいトラック。
  • Depending On You – カントリー・ロックの意匠を取り入れた、切なくも壮大なスケール感を持つミディアム・バラード。ミックの歌唱のエモーショナルな表現力と、美しく重ねられたアコースティック・ギターやストリングスの配置が、往年の彼らのバラード名曲群をアップデートさせたような仕上がりです。
  • Bite My Head Off – ザ・ビートルズのポール・マッカートニーがベースで参加した、パンキッシュで攻撃的な爆走ロックンロール。(※録音の裏話は後述のコラムにて)
  • Whole Wide World – ロンドンの薄暗いストリートでの若き日の記憶を想起させるような、どこか哀愁を帯びた、それでいて力強いモダン・ロック。エッジの効いたリフとスタジアム・ロック然としたダイナミックな展開が、本作の持つエネルギーを象徴しています。
  • Dreamy Skies – 都会の喧騒を離れ、AMラジオとカントリー音楽を聴いて過ごす隠遁生活を歌った、泥臭くも穏やかなカントリー・ブルース。キースが爪弾くアコースティック・スライドギターと、ミックの哀愁を帯びたブルースハープが美しい調和を見せています。
  • Mess It Up – 2019年のセッションでチャーリーが叩いたドラムトラックをベースに構築された、ディスコ・ファンク調の軽快なダンサブル・ナンバー。本作から3枚目(配信のみ)のシングルとしてカットされ、チャーリーのキレのあるバックビートが、現代的な4つ打ちのグルーヴと見事に融合しています。
  • Live By The Sword – 前曲に続きチャーリーのドラム、さらに元メンバーのビルがベース、エルトン・ジョンがピアノで参加した豪華なクラシック・ストーンズ・トラック。(※サウンドの秘密は後述のコラムにて)
  • Driving Me Too Hard – キースとロニーによる絶妙な「ギターの織り交ぜ(ウーヴィン)」が堪能できる、軽快で少し気怠いフォーク・カントリー・ロック。親しみやすいメロディの裏で、ストーンズらしいルーズでタフなビートがしっかりとボトムを支えています。
  • Tell Me Straight – キースが哀愁を帯びた声でリードボーカルを執る、本作唯一のキース・ナンバー。「自分の未来はすべて過去にあるのか?」と老境の孤独と内省的な心境を静かに問いかける歌詞と、キース自身のソリッドなアルペジオギターが胸を打つ傑作。
  • Sweet Sounds Of Heaven – 先行して2枚目にシングル・カットされた、レディー・ガガの圧倒的なゴスペル・ボーカルと、スティーヴィー・ワンダーの流麗なピアノ/モーグ・シンセサイザーが火花を散らす、7分を超える至高のソウル・バラード。ミックとガガによる咆哮のようなボーカル・バトルが鳥肌モノの余韻を残します。
  • Rolling Stone Blues – ミックの歌とハープ、キースのアコースティック・ギターのみで演奏される、シカゴ・ブルースの巨匠マディ・ウォーターズの1950年のカバー。バンド名の由来となった原点にして究極の楽曲を、60年以上のキャリアを経て2人だけで生々しく一発録りした、ディスコグラフィーの円環を閉じる感動的なラストトラック。
💡 ポール・マッカートニーとのパンク・セッション

4曲目の「Bite My Head Off」は、ストーンズとビートルズという、ロック界の2大巨頭による歴史的な邂逅が実現したトラックです。

プロデューサーのアンドリュー・ワットは、ポールと親交を深める中で、彼に特別なプレゼントを贈りました。それは、ポールがビートルズ時代から愛用しているものと同じ、1964年製の左利き用カール・ヘフナー(Höfner)のバイオリンベースでした。しかしこれには仕掛けがあり、ワットのギターテックによって内蔵ファズ回路を組み込んだ特別仕様になっており、スイッチを入れるだけで過激なファズ・ベースが鳴り響く仕様に改造されていたのです。

前日にこのベースを贈られて大喜びしたポールは、実際の録音セッションにこの「秘密兵器」を携えて登場。スタジオでポールが内蔵ファズのスイッチを入れた瞬間、彼の目が輝き、凄まじいパンク・ベースを弾き始めました。ミックがスタジオの中心へマイクを引っ張り、ブースから「ポール、もっと狂ったように弾いてくれ!」と煽り立てたことでセッションの熱量は最高潮に達しました。

かつてメディアが煽り立てた「ストーンズ対ビートルズ」の壁を軽々と笑い飛ばすかのように、80代を迎えたレジェンドたちがスタジオで純粋に初期衝動をぶつけ合った、スリリングなガレージ・セッションの事実がここに刻まれています。
💡 「Live By The Sword」に集結した奇跡の5人

8曲目に収録されている「Live By The Sword」は、一見すると本作のタイトなロックンロールの1曲ですが、そのクレジットを精査すると、ストーンズの歴史における「奇跡の瞬間」が記録されていることが分かります。

この曲のドラムは、2019年にロサンゼルスにあるヘンソン・レコーディング・スタジオで、チャーリーが生前に叩き残していた貴重なマスターテイクがベースになっています。プロデューサーのアンドリュー・ワットは、このチャーリーのドラムトラックを活かすため、1993年にバンドを正式脱退していたオリジナル・ベーシストのビルに直接連絡を取り、参加を依頼しました。

ビルは「チャーリーが叩いているなら」とこれを快諾。これにより、作品の上では、ミック、キース、ロニー、そしてチャーリーとビル」という黄金期の5人が再び顔を揃えたという、ファン感涙のバックグラウンドが成立しました。

エルトン・ジョンのピアノのバッキングとともに、あのストーンズ特有の「重なり合い、絶妙にヨレる無敵のボトムのグルーヴ」が現代によみがえった、歴史的に極めて資料価値の高い重要トラックです。