
- Mother’s Little Helper
- Stupid Girl
- Lady Jane
- Under My Thumb
- Doncha Bother Me
- Going Home
- Flight 505
- High And Dry
- Out Of Time
- It’s Not Easy
- I Am Waiting
- Take It Or Leave It
- Think
- What To Do
Released: 15 April 1966
Producer: Andrew Loog Oldham
Additional Musicians:
Ian Stewart – Piano, Organ
Jack Nitzsche – Piano, Organ, Harpsichord, Percussion
1966年4月にリリースされた、イギリス本国における4枚目のオリジナル・アルバム『Aftermath (UK)』。
本作は、ストーンズの歴史において最も重要な「初めてすべての収録曲がジャガー/リチャーズの手によるオリジナル曲で占められたアルバム」です。カバー曲中心だった初期から脱却し、バンドが独自のアイデンティティを完全に確立した金字塔的な名盤と言えます。
ハリウッドのRCAスタジオでじっくりと時間をかけてレコーディングされた本作は、ブルースやR&Bの枠組みを飛び越え、ポップ、フォーク、バロック音楽、さらにはブルースやR&Bの枠を越え、ポップ、フォーク、バロック音楽、さらには東洋音楽の要素までを吸収。天才マルチプレイヤー、ブライアンが様々な民族楽器を操ってサウンドをカラフルに彩った、全14曲を徹底解説します。
才能が大爆発!全収録曲解説
- Mother’s Little Helper – 薬物に頼る現代の主婦を皮肉った、全米8位を記録した代表曲。キースの弾くアコギに加え、ブライアンが奏でる12弦エレクトリック・スライドギターによる「シタール風のリフ」がサイケデリックに響く、記念すべきオープニングトラック。
- Stupid Girl – ミックによる辛辣で攻撃的な歌詞が物議を醸したガレージロック調のナンバー。イアン・スチュワートの無骨なピアノと、ジャック・ニッチェによるハネるオルガンが、初期の荒々しさを残すグルーヴを生み出しています。
- Lady Jane – エリザベス朝の宮廷音楽を思わせる、哀愁漂うアコースティックなバロック・ポップ。キースの静かなギターに乗せて、ブライアンが奏でるアパラチアン・ダルシマーの古風で美しい音色が完璧な世界観を作っている名曲。
- Under My Thumb – ストーンズの歴史において外すことのできない最重要曲の一つ。ブライアンが叩くアフリカ由来の楽器「マリンバ」の軽快で不穏なメロディラインと、ビル・ワイマンの歪んだファズベースが奇跡の融合を見せる、バンドの新たな黄金期を告げる傑作。
- Doncha Bother Me – 彼らの原点である「泥臭いシカゴ・ブルース」の匂いを強く残したヘビーなトラック。ブライアンによる強烈なボトルネック・スライドギターが全編にわたってうねりを上げています。
- Going Home – ロック界では当時としては異例の11分超えの超大作ロング・ジャムセッション。RCAスタジオのリラックスした空気の中、ミックの即興ボーカルとメンバーの熱いアドリブ演奏がそのままパックされています。
- Flight 505 – 飛行機事故をテーマにした、ブラックユーモア溢れるアップテンポなロックンロール。イントロでイアン・スチュワートが「Satisfaction」を思わせるリフをピアノで弾いているのがマニア向けの聴きどころ。
- High And Dry – キースが弾く軽快な12弦アコースティックギターをベースにした、ストーンズ流のカントリー・ブルース。ミックの吹く泥臭いハーモニカのフレーズが、どこか懐かしいアメリカ南部のアウトローな雰囲気を醸し出しています。
- Out Of Time – 後にミック・ジャガーのプロデュースによるクリス・ファーロウ版が全英1位を獲得した名曲。ここでもブライアンのマリンバが全面的にフィーチャーされ、キャッチーなメロディを鮮やかに彩っています。
- It’s Not Easy – 疾走感のあるビートと、初期を彷彿とさせる骨太なギターリフが心地よいR&Bロック。キースとビルの力強いバックコーラスが、曲のドライブ感をさらに加速させています。
- I Am Waiting – フォークロックとサイケデリックが融合した、ストーンズとしては非常に珍しい神秘的でメランコリックな名曲。静かなパートとサビの激しいバーストの対比が素晴らしく、ブライアンの弾くダルシマーが不思議な浮遊感を演出しています。
- Take It Or Leave It – すでにザ・サーチャーズに提供されていたポップナンバーをセルフカバー。ブライアンが奏でるハープシコード(チェンバロ)のクラシカルな響きと、ジャック・ニッチェのフィンガーシンバルが小粋なアクセント。
- Think – 歪んだファズギターが全編をリードする、初期ガレージパンクの熱量を持ったパワフルなナンバー。
- What To Do – アルバムのラストをポップに締めくくる、キャッチーなコーラスワークが印象的なトラック。ビートルズやビーチ・ボーイズのような美しいハーモニーに挑戦しつつも、ストーンズらしい気怠さとユーモアが漂う初期の隠れた佳曲です。
| 💡 ブライアンが彩った『Aftermath』の音響世界 本作において、ストーンズがこれまでの無骨なR&Bバンドから脱却し、カラフルなポップ・ミュージックの領域へ踏み出せた背景には、マルチプレイヤーとしてのブライアン・ジョーンズの貢献が不可欠でした。彼はスタジオ内の多様な楽器を瞬時に習得し、楽曲のキャラクターを決定づけるフレーズを構築していきました。 マリンバ(木琴)による不穏なフック: 「Under My Thumb」や「Out Of Time」で大胆にフィーチャー。ビルのファズベースと絡み合うマリンバの軽快かつ冷徹なリフレインは、それまでのギターロックにはない洗練された陰影を楽曲に与えました。 アパラチアン・ダルシマーによる古典の意匠: 「Lady Jane」や「I Am Waiting」で使用。アコースティックで古風な弦の響きが、中世エリザベス朝の宮廷音楽を思わせる高貴なメランコリーをアルバムにもたらしています。 12弦スライドギターによるアプローチ: オープニングの「Mother’s Little Helper」では、12弦エレクトリック・ギターをスライドバーで演奏。後の本格的なシタール導入へと繋がる、独自のサイケデリックな歪みリフをいち早く生み出しています。 キースが直球のロックンロールの骨組みを作ったのに対し、ブライアンはハープシコード(チェンバロ)などを含め、楽曲に色彩を塗る「音色のプロデューサー」として才能を開花させました。彼が従来のギタリストの枠を軽々と飛び越えたからこそ、本作は今なお初期ストーンズの最もクリエイティブな金字塔として特別な光を放ち続けているのです。 |
| 💡 RCAスタジオがもたらした「11分超の即興演奏」とスタジオワークの進化 本作『Aftermath』の音楽的な飛躍を支えた大きな要因の一つが、ロサンゼルスのハリウッドRCAスタジオという、当時最新鋭の設備を備えた環境で時間をかけてレコーディングが行われた点です。 11分超えの楽曲「Going Home」の登場 6曲目に収録されている「Going Home」は、収録時間が11分13秒に及びます。当時のポップ・ミュージック界において、1曲の長さが11分を超えるというのは極めて異例の事態でした。この曲は、あらかじめ緻密に構成されたものではなく、スタジオ内でのリラックスした雰囲気の中から生まれた即興のジャムセッションがベースになっています。それまでの「3分間のシングルヒット」という枠組みを飛び越え、演奏の衝動をそのままレコードに刻み込むという試みは、ストーンズにとっても、そして当時のロックシーンにとっても先進的なスタジオワークの先駆けとなりました。 1966年という時代の共鳴 ストーンズが全曲オリジナルによるアルバム『Aftermath』を制作していた1966年は、ロックが「シングル主体の娯楽」から「アルバム主体の芸術」へと急速に変貌を遂げていく激動の年でした。同年の5月にはボブ・ディランが11分超の「Sad Eyed Lady of the Lowlands」を含む2枚組『Blonde on Blonde』を、ザ・ビーチ・ボーイズが精緻なスタジオワークの結晶である『Pet Sounds』を発表。さらに8月にはザ・ビートルズが革新的な音響実験を詰め込んだ『Revolver』をリリースしています。ストーンズもまた、RCAスタジオの専属エンジニアであったデヴィッド・ハッシンジャーらの技術的なサポートを受け、ジャック・ニッチェによる多彩な鍵盤・パーカッションの導入など、スタジオという空間を自らのクリエイティビティを発揮する実験場として機能させ始めました。カバーバンドからの完全な脱却を証明した本作は、1966年というポップミュージックの黄金期において、彼らが時代の最先端と完全に共鳴していた事実を雄弁に物語っています。 |