ローリング・ストーンズはニュー・アルバム『フォーリン・タングス』の制作舞台裏に迫る全6エピソードからなるポッドキャスト『スピーキング・イン・タングス』を、2026年6月25日から毎週配信しています。番組の案内役(ナレーション)は、人気女性シンガーのノラ・ジョーンズが務めています。
この番組ではストーンズのメンバーとプロデューサーのアンドリュー・ワットがソングライティングのプロセスやスタジオでの録音技術、クリエイティブ面での影響について語るほか、スタジオでの独占アウトテイクや、これまで誰も聴いたことのない新曲の音源が公開されます。
さらに、ザ・キュアーのロバート・スミス、スティーヴ・ウィンウッド、そしてアルバムのアートワークを手がけたナタニエル・マリー・クインなどのゲストの出演が予定されています。
エピソード1:『Aftermath』(2026年6月25日 配信)
前作の未発表ストックの活用
ニュー・アルバム『Foreign Tongues』は、前作『Hackney Diamonds』の爆発的な成功の「余波(Aftermath)」から生まれました。 ミック・ジャガーは、前作の未発表曲が多く残っていたためスムーズに制作へ入れたと明かしています。
ミック:「何年も前にも、まったく同じことがあった。素晴らしい曲ができても、使わないことがある。 アルバムに入れている他のトラックと似ているからだ。 例えば、同じようなカントリー・ソングが2曲あったり、よく似たパンク・ソングが2曲あったりする場合だ。 だから、僕たちはいつも『あれをやろう』と言っていたし、何をどうすべきかも分かっていた。 それが上手くいったんだ。 スタジオに費やすのは合計で何週間、と決めていたからね。」
アンドリュー・ワットの才能
バンドに活力を注入したのはプロデューサーのアンドリュー・ワットです。 ロニー・ウッドは彼を「ジミー・ミラー以来の推進力」と評しました。
ロニーは、例えばドン・ウォズなら「スタジオに行きたくない」と言うと「じゃあ、いいよ」となるが、アンドリューは「嫌でもスタジオに来い、来週末までに自分のパートを終わらせるんだ」と言う、と2人のプロデューサーの違いを説明しました。
ミックも「アンディ(アンドリュー)はあらゆることをこなせる。彼はロック・ミュージックを愛しているし、その歴史をすべて知っている。 ブルースの歴史にもかなり詳しい」と彼の才能を高く評価しています。
リズムセクションの強化
そして今回最も重要なのが、亡きチャーリー・ワッツの精神を受け継ぐ新体制のグルーヴです。 前作のレコーディングには不参加だったダリル・ジョーンズがスタジオへ復帰し、チャーリーが後継指名したスティーヴ・ジョーダンとのコンビで強固なリズムの土台が構築されました。 キース・リチャーズは、アンドリューがまとめ上げたスティーヴとダリルのリズムセクションを振り返り、「あのクソ野郎たちには最高に満足している」と大絶賛しています。
メンバーの死と大ヒットという2つの出来事の「その後」をサバイブしたストーンズが、さらなる高みを目指して走り出したことを告げる導入編です。
エピソード2:『Connection』(2026年7月2日 配信)
エピソード2では、主にミックとキースの「50年以上続くソングライティングの絆(コネクション)」に焦点が当てられています。
50年経っても変わらない「ジャガー/リチャーズ」のパズル
ミックとキースは普段、何千マイルも離れて暮らしています。 数ヶ月に一度集まり、「何を持ってきた?」とアイデアを見せ合うのが長年のスタイルです。
ミックはスタジオに入る前に完璧に準備を整えたいタイプ。 歌詞のアイデアをベッドの中でスマホに吹き込み、後から「手垢のついた表現」を削ぎ落として職人的にビルドアップしていきます。
キースはインスピレーション(女神)をただ待つことはせず、とにかくギターを持って座ります。 適当に弾いているうちに、自分の指が意図しない素晴らしい場所へ勝手に動いていく瞬間(=ゾーンに入る瞬間)を捕まえます。
アンドリューは二人の作曲をこう語っています。 「誰がその曲を書き始めたかなんて関係ありません。もしミックが曲を書き始めたとしても、キースはそれを自分のものにして、あの信じられないようなリフを思いつく。 逆にキースが曲を始めたなら、ミックはボーカルのフレーズを自分らしく、クラシックなストーンズの楽曲のように響かせる方法を見つけ出す。 彼らは本当に美しく共同作業を行っていました。」
スティーヴとミックの濃密なセッション
ミックは「スティーヴと2人きりでスタジオにこもった」というエピソードを明かしました。 かつてチャーリー・ワッツとも同じことをしていたそうです。 他のメンバーが休憩している隙に、ミックはドラマーと1対1で細かなビートを擦り合わせます。
ミックの持論として、「ギターやベースを抜きにして、ドラムのアクセントとボーカルのインフレクションだけでグルーヴを噛み合わせる瞬間」があり、これはジェームス・ブラウンなどのソウル・ミュージックから学んだ手法とのことです。
ミックは「Jealous Lover」を現代版にアップデートされたカーティス・メイフィールドのビートにしたかったが、それが上手くいくか分からなかったため、スタジオでピアノを弾いて、スティーヴと一緒に飛び跳ねて踊りながら、いろんなビートを試行錯誤した舞台裏を振り返っています。
ルーツである「黒人音楽(ブルース)」への深い敬意
今作のアートワークを手がけた画家ナタニエル・マリー・クインが、ミックとランチをした際の会話を明かしています。
ミックは「自分たちの音楽はすべてアメリカの黒人音楽から強い影響を受けている」と強調しました。 黒人音楽とは、人生の困難な嵐を経験した後に、歓喜や休息を見出すための手段であり、ストーンズはその魂に深く共感したからこそ、今も彼らのブルースは本物なのです。
このポッドキャストのホストを務めるノラ・ジョーンズも、彼らが鳴らすブルースの特別さを熱く語っています。「ストーンズがやるブルースは、永遠に終わってほしくないと思わせる本物です。他のバンドなら『はいはい、ブルースね』となるところを、彼らがやると全く別物になる。今回のアルバムにはそんな泥臭いブルースがたくさん詰まっていて、曲はどれも想定より長くなっていますが、そんなことは知ったこっちゃありません。」
エイミー・ワインハウスのカバー
また今回の目玉として、イギリスが誇る不世出のシンガー、エイミー・ワインハウスのカバー曲「You Know I’m No Good」で、ミックがマイナーキーのブルース・ハーモニカを熱演していることも明かされました。
ミック:「元々はホーンのパートだったと思うんだけど、幸運なことにそれがハーモニカに本当にぴったりフィットしたんだ。まるで最初からハーモニカのために書かれたパートであるかのように。 この曲はマイナーキーなんだけど、マイナーキーのハーモニカというのは、『Miss You』や、リトル・ウォルターがマイナーキーでやっているインストゥルメンタル曲みたいに、ちょっと特別なものなんだ。 少し違う雰囲気があって、より簡単で、ある意味より感情に訴えかけるものになるんだ。」
エピソード3:『Get Close』(2026年7月9日 配信)
一発録り(ライブレコーディング)への執念
エピソード3では、ロンドンの「メトロポリス・スタジオ」で行われた、メンバー全員が同じ部屋で顔を見合わせて行う「一発録り(ライブレコーディング)」の裏側と、ストーンズが今なお守り続けるロックンロールの原点の魔法に焦点が当てられています。
プロデューサーのアンドリュー・ワットは、現代のバンドがクリックトラックを使いパーツごとに音を重ねるのに対し、ストーンズが全員でスタジオの床に立ち、互いに反応し合いながら一瞬を切り取る「一発録り」の神聖さを熱く語っています。
キース:「ドラマーがノっていれば、『もちろん、もう一回テイクをやろう』となる。俺たちはそれだけ上手いからね(笑)。セッションはかなりカジュアルに進むけれど、『これはどこへ向かうべきか』という話になった瞬間、部屋はそのことだけに集中する。全員が『これはどう?あれはどう?ちょっと試させて』と考えている、忙しい働き蜂のようになるんだ。ワークショップ(作業場)のようだね。」
ドラムの音響配置へのこだわり
スタジオ入りしたミックが最も熱を注ぐのが、アコースティック楽器である「ドラムの配置」です。最高の響きを得るために完璧な場所を決めることは、レコーディング前の最重要タスクだと明かしています。
ミック:「俺はスタジオに入ると『ドラムに憑りつかれた人間』になる。何年も前に遡るけれど、トラックを録音するときドラムは完璧でなければならない。後からそれほど変更できないからだ。他のものは電気楽器だから後からどうにでもなる。だから、レコーディング当日に位置を決めるような間違いはしない。事前にドラマーと『この場所で居心地はいいか?良い音に聴こえるか?』と徹底的に擦り合わせるんだ。」
スタジオという名の「巨大な電子ツール」と実験
キースは、1962年のデビュー当時の2トラックから現在の無限のトラック数への技術の進化を振り返りつつ、デジタル全盛の現代でも「スタジオは恐れずにアイデアを試す場所」という本質は変わらないと語ります。
キース:「壁に2トラックのレボックスがあった時代から、今や無限にトラックを使えるようになった。それは少し奇妙な感覚だけどね。ミックはボーカルの重ねをいつ止めるべきか、ファルセットのスタックを何個作ればいいんだと悩んだりしている(笑)。」
ミック:「スタジオの素晴らしいところは、ただ自分のアイデアを試せることだ。試そうとするアイデアの90%はクソみたいなもの(使い物にならない)さ(笑)。でも、そうやって目指す場所に到達する。恐れを知らずに、ただそれを試してみなければならないんだ。ミスがあっても後から修正できる。スタジオは音楽を作るための巨大な電子的ツールなんだ。」
ゲストが目撃したストーンズの「錬金術」
今作『Foreign Tongues』の14曲中9曲でキーボードを弾いている伝説のミュージシャン、スティーヴ・ウィンウッド。そしてゲストとしてスタジオに居合わせたザ・キュアーのロバート・スミス。同じ時代を戦うレジェンドたちが、ストーンズの「阿吽の呼吸」と圧倒的な熱量の魔法をそれぞれの視点で証言しています。
スティーヴ:「即興というのは作曲と非常に密接に結びついているんだ。ただ、アプローチが少し違うだけさ。音楽的にも、おそらく人間的にもお互いを理解し合っていて、まったく同じ波長にいる人々が集まると、すべての要素がパッと一つになる。そして、それが一つになって特別な何かを作り出すのに、それほど時間はかからないんだよ。」
ロバート:「ミックは自分が何を得たいのかを正確に分かっていて、それを実際に掴み取っていた。驚くべきことだよ。味気ないボーカル録りなんかじゃなく、自分の足で立ち、踊り、歌い、基本的にはパフォーマンスをしていたんだ。コントロールルームの熱量は本当に肌で感じられる(パルパブル)ものだった。そこからわずか数フィートしか離れていない場所でそれを見ているのは、実に並外れた体験だったね。」たから圧倒されたよ。」
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