マリアンヌ・フェイスフルの遺作EPを聴く

Marianne Faithfull

マリアンヌ・フェイスフルが亡くなった後の初リリースとなる4曲入りEP『Burning Moonlight』は、4月12日にまずレコード・ストア・デイ用にアナログ盤でリリースされ、その後6月6日よりデジタル配信が開始されました。フェイスフルは死の前年からこれらの曲に取り組んでおり、肺気腫とCOVIDの後遺症に苦しみながらも最後まで歌い続けたとのことです。前作『She Walks in Beauty』(2021年)は、ウォーレン・エリスの音楽に乗せてフェイスフルがロマン派の詩を朗読し、ニック・ケイヴ、ブライアン・イーノらが伴奏を務めた素晴らしいアルバムでしたが、やはりフェイスフルには歌って欲しいと思っていたファンにとって、このEPのリリースはかけがいの無いものになりました。

Burning Moonlight

Released: 2025
Recorded: London
Producers: Head, Rob Ellis, Oscar Dunbar, Andrew Batt
Mixing: Head
Label: Decca

エグゼクティブ・プロデューサーであるアンドリュー・バットによれば、4曲の録音は60年前の1965年4月15日に同時にリリースされたフェイスフルの最初の2枚のアルバムに影響を受けていて、アナログ盤のサイド1にあたる2曲はポップ・デビューLP『マリアンヌ・フェイスフル』、サイド2の2曲はフォーク・アルバム『カム・マイ・ウェイ』に触発されているとのことです。

Burning Moonlight (Lyrics: M.Faithfull, Music: L. Courts / J.Madsen)

デビュー・シングル「As Tears Go by」の冒頭の一節(”It is the evening of the day”)にインスパイアされた感動的なバラード。ロブ・マクヴェイが弾くミュートされたアコースティック・ギターをバックに「生き残るために燃える月明かり、火の中を歩くことが私の人生」と歌っています。

Love Is (M.Faithfull / O.Dunbar)

フェイスフルの孫で自身も音楽アーティストであるオスカー・ダンバーと初めて共作したアップビートなナンバー。「そして私はほとんどの場合は幸運だった」という印象的なフレーズの後に、若い頃の自分が音楽業界での初期の経験(パーティーやローリング・ストーンズ)について語る会話でフェイド・アウトします。

Three Kinsmen Bold (Traditional)

フェイスフルのフォーク的な側面に大きな影響をあたえた父グリン・フェイスフルから学んだトラディショナル・ナンバー。ロブ・エリスがンセサイザー、ピアノ、チェレスタを担当しています。

She Moved Thru’ The Fair (Traditional / P.Colum)

フェイスフルが1966年のアルバム『North Country Maid』で初めて録音して以来、生涯を通じて演奏してきた曲。今回のアカペラ・ヴァージョンは最初のレコーディングとは対照的な感情的な作品になりました。

なお、このEPのエグゼクティブ・プロデューサーであるアンドリュー・バットは今夏発売されるフェイスフルのデッカ録音の初のCDボックスセット『Cast Your Fate To The Wind: The Complete UK Decca Recordings』のリマスターも担当しています。ボックス・セットには60年代の4枚のアルバム 『COME MY WAY』 『LOVEINAMIST』 『MARIANNE FAITHFULL』 『NORTH COUNTRY MAID』の他、アルバム未収録シングルやシングルB面、4曲の完全未発表曲を含むレア音源など全81曲が収録されています。